
題名の『サラバンド』とは、17〜18世紀にヨーロッパの宮廷で普及した古典舞曲のことで、とくにバッハの《無伴奏チェロ組曲第5番》のサラバンドは有名である(アトム・エゴヤンが、この曲をモチーフに世界的なチェロ奏者ヨーヨー・マを俳優としても起用し、『サラバンド』という短篇を撮っているのはよく知られている。またヴィスコンティの『地獄に堕ちた勇者ども』、ソクーロフの『太陽』などでも、同じサラバンドが使用されている)。この作品では、あたかもふたりの父娘の身悶えるような常軌を逸した愛憎そのものを象徴しているかのようだ。
というのも、カーリンから訣別の言葉を聞くとヘンリックはこのサラバンドを弾いてくれるように頼み、娘が決定的に去った後には自暴自棄となり、痛ましい行為に走るからである。
とくにふたりが向き合ってチェロを練習するこのシーンは、言葉をもたない激しい対話のようにサラバンドが使用され、それはやがてラストの、マリアンとその娘マッタの言葉をもたない、しかし感情の激しい触れ合いにまで移行することとなる。そこにはあきらかに、憎しみや苦しみを超えた、神の顕現とも言うべき愛が通う瞬間がある。

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