
『サラバンド』では、厖大な思い出の写真がうず高く積まれた机の前に座り、キャメラに向かって柔和な表情を浮かべたマリアンが、離婚後のふたりがどうなったか、そしてふいに啓示を受けたように、片田舎の別荘で隠遁生活をしているヨハンを訪ねる決意をしたことを淡々と語り始める。プロローグとエピローグに全10章を加えたこの作品は、リヴ・ウルマンのゆるやかな語り口で、観る者を一気に引き込んでいく。30数年ぶりに再会を果たしたふたりは、まるで恋人同士のように再会を祝福し合い、
キスを交わし、抱擁し、ノスタルジックで親密な会話を重ねていく。別荘の近くには、ヨハンの息子ヘンリックが娘のカーリンと暮らしており、一見、美しい自然に囲まれた穏やかな環境で、幸福な余生を送る老人の日々がスケッチされていくかにみえる。
しかしベルイマンは、章を追うごとに仮借ない眼差しで、このヨハンとその家族が抱える〈精神の地獄図〉ともいうべき苦痛に満ちた、“叫びとささやき”が交錯する修羅場そのものを執拗に暴いていくのである。

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